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ドスンと地面に落とされた衝撃を感じたと思うと、久しぶりの光が俺の周りに差し込んできた。
トランクケースが開いたのだ!
のぞき込んで来たのは、真っ白な巻き髪がキラリと輝く女だった。
「全部 布ね。これなら分けやすいわ。最近ひどいのよ。食べ物やら何やら一緒に詰め込んだ、ゴミ箱みたいな物を 平気で持ってくる人も居るのよ」
そう誰かに話しながら、よく喋る白い巻き髪はトランクケースを開けたまま離れていった。
またしばらくして よく喋る白い巻き髪が戻ってきた。
トランクケースの中の衣類達が1枚ずつ取り出され、3つのカゴに分け入れられてゆく。
俺は白いパンツの女が着ていたデニムパンツや 刺繍がたっぷり施されたブラウスと同じカゴに移された。斜め下に居たレース織物は、別のカゴに投げ入れられた。
空っぽになったトランクケースを持ち上げると、カタカタと底から音がする。四角いレザーの切れ端が出てきた。俺に付いていたものだ。501ZXXと書かれている。
「あらー。外れちゃってるのね」
そう言うと俺の上に積まれたデニムパンツを一本手に取り、建物の奥へ消えた。
デデデデデデという音が 奥から聞こえたかと思うと、また白い巻き髪が戻ってきた。
俺のレザーの切れ端を縫い付けたデニムパンツを、白い巻き髪は満足そうに広げて「よしっ」と呟き、俺のカゴの中にポイッと入れた。