俺はインディゴ 名前はまだ無い(3)

beans

(3)

家に居る以外のほとんどは、縦長いロッカーで過ごしている。朝にハンガーに2つ折りで吊されて、暗くなるまでここに居る。

湿気の多いロッカーは、吊されて居る方が俺は快適だ。マモル君はよそ行きの所作で俺を吊すという選択をしたのかもしれない。吊された状態での楽しみは、外から聞こえる音楽だ。

 

ロッカーに着いてしばらくすると、ギターやドラムの爆音が一定のリズムを刻む音がしてくる。昔、似た楽器の爆音を聞いたことがあるが、ここで聞く爆音は、メロディを重視していないようだ。

はじめは騒音だったが、身を委ねると何も考えなくてよい利点を見つけた。がなるような声が添えてあり、なにか怒っているときや、不満を抱えるメンタルをアウトプットする瞑想の役割を果たしているようだ。

 

しばらくすると、メロディだけの音楽に変わる。ドラムからトランペット、ピアノまでとにかく歌っている。一見、落ち着いた音楽に聞こえるが「私の歌を聴け」といわんばかりのメロディが折り重なる曲。楽器の自己主張がとめどなく続くと、耳は無意識に受け取りを拒否するものだ。それが功をなして、BGMの役割を果たしているように思われた。

俺はこのBGMと食べ物が焼ける匂いを嗅ぎながら、昼寝をするのが日課だ。

 

またしばらくすると、BGMや ざわついたひと気も消え。

 

そしてまた、

太陽が去り行くときに放つ、真っ赤な光りをロッカー内でも感じるころに、ふたたびBGMと食べ物の匂いが立ちこめる。

 

そして全くの太陽光を感じなくなってから、程なく音が消えて、マモル君がロッカーに戻ってくるのだ。

 

汚れ落ちが良さそうな、カシャカシャとした衣類を脱いで俺を履く。

俺はいつも、この油の匂いがする体に、

「おつかれさま」

と語りかけている。

どうやら伝わっているようでマモル君も着替えが終わると

「はぁ」と安堵のため息をこぼした。

 

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