小説

俺はインディゴ 名前はまだ無い(14)

beans

 

14

 

次々に段ボールへ入れられていく服達。

ベニア臭いクローゼットの中には、マモル君のTシャツ2枚とハーフパンツにトランクス。黒毛の衣類が入った紫色のバッグだけになった。

 

「そのバッグも入れちゃって」

台所をスポンジで磨きながら、振り向きもせずに話す黒毛は忙しそうだ。

最近の一張羅であろう白いオーバーオールも、お尻が灰色に汚れてしまっている。

「まだ2日あるよ、引っ越し屋。服無いと困るでしょ。俺の服残しておこうか?」

「だいじょぶ、だいじょぶ。今日はウチ戻らないといけないの」

 

クローゼットの横に、のそりとあぐらを組んで座ると、林檎と“HI-C”の文字が描かれた缶を持ち上げ 口を付けた。

「そっちの家の梱包、終わってなかったっけ。俺も行こうか?」

「ううん、だいたい終わってるよ。今日さ、ユカが遊びに来るの。知ってるっけ?」

手と濡れたオーバーオールをタオルで拭きながら、小さな冷蔵庫をのぞき込む。茶色の細長い小瓶を取り出し、「元気ハツラツだよねぇ」と つぶやきながらリングをひっぱり蓋を開けた。

「あー、頭が大きい子」

「頭が大きいって!そうだけど、頭じゃなくて髪だよ」

「カツラ、流行ってるの?夏でもニット帽とか」

「うーん、そうだね。そのうち流行るんじゃないかな」

缶を飲み干し立ち上がると、俺のポケットの中から じゃらりとカギを出した。

「これ、そっちの家のカギ」

「あ、ありがと」

黒毛の年齢には似合わない、パンダのポシェットのカギを入れ、中から別のカギを出してマモル君に渡した。

 

「スペア作ったばっかりなのにな」

ニコリと笑うマモル君。

 

「私、新しい家のカギはお揃いのキーホルダーにしたい。パンダのイロチとか♪」

「・・・・それはちょっと…」

 

どうやら数日後に ここを出て、新しい家で住むようだ。

 

 

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