16 「少し片付けてよ」 パタンとクローゼットを締めならが、黒毛が訴えた。 洗い上がった俺と靴下を クローゼットの中の引き出しに詰めるのは、どうやら黒毛の仕事ではないようだ。 「あぁ、置いとい […]
小説
俺はインディゴ 名前はまだ無い(15)
15 俺の隣に三つ折りにされたデニムパンツは、よく喋る。先週からクローゼットに入って来た服だが、キャリーバッグに居る ここ数日で、こんなに親しくなるとは思わなかった。 「糸が違う […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(14)
14 次々に段ボールへ入れられていく服達。 ベニア臭いクローゼットの中には、マモル君のTシャツ2枚とハーフパンツにトランクス。黒毛の衣類が入った紫色のバッグだけになった。 「その […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(13)
13 狭いカゴの中で黒毛を待っている。 一緒にいた服達は、使い込まれた洗濯機に放り込まれ 回っていた。俺だけはプラスチックのカゴに入れられたのだが、黒毛が去ったあと、ピンク色の肩が尖ったワンピースを着た女が […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(12)
12 「夕ご飯は食べていくの?」 膝の白い女が 洗い上がった服達を畳みながら、斜め後ろをチラリと振り返り聞いた。 今日のマモル君は魂が半分抜けてしまったのか。見たことの無い表情で過ごしている。 […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(11)
11 ビルの向こうは またビル。こちらもビル。 ビルとビルに挟まれた夕暮れは、虫の音も夕日の後ろ姿も感じることは無い。ただ灰色の空気が、こそいら一体を沈み込んで 夜がやってくる。 灰色になっていく街を、マモル君は […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(10)
10 大きなスリッパのような陶器に尻を近づけるマモル君。膝でじゃばらに寄せられ、しゃがんだ足に挟まっている。 「トイレ」と言うとこのスタイルになるのだが、初めは困惑した。マモル君に出会うまでは無かった体験だった。 […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(9)
9 ロッカーの外から聞き慣れない声がする。どうやら笑顔の不自然な女が、誰かに話しかけているようだ。 「吐き気はする?タクシー呼ぼうか?」 「よくある事なので大丈夫です。貧血だと思います、すみません。歩けるようになった […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(8)
8 白いスニーカーを履いた男が、カウンターの真ん中でウイスキーを飲んでいる。グラスぎりぎりの大きさの氷が 溶けるのを楽しむように時間をかけていた。 少し飲むたびに、への字になる口元。その度に、まわりのヒゲが90度立ち […]
俺はインディゴ 名前はまだ無い(7)
7 タバコの煙で真っ白になった部屋で、マモル君は陶酔して歌っている。 狭い部屋に人間が7人が座っているが、数時間前には13人が引き詰めていた。けだるいムードだが楽しいようだ。 「終電あるって言 […]