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俺はインディゴ 名前はまだ無い(11)

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11   ビルの向こうは またビル。こちらもビル。 ビルとビルに挟まれた夕暮れは、虫の音も夕日の後ろ姿も感じることは無い。ただ灰色の空気が、こそいら一体を沈み込んで 夜がやってくる。   灰色になっていく街を、マモル君は […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(10)

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  10   大きなスリッパのような陶器に尻を近づけるマモル君。膝でじゃばらに寄せられ、しゃがんだ足に挟まっている。 「トイレ」と言うとこのスタイルになるのだが、初めは困惑した。マモル君に出会うまでは無かった体験だった。 […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(9)

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9   ロッカーの外から聞き慣れない声がする。どうやら笑顔の不自然な女が、誰かに話しかけているようだ。 「吐き気はする?タクシー呼ぼうか?」 「よくある事なので大丈夫です。貧血だと思います、すみません。歩けるようになった […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(8)

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8   白いスニーカーを履いた男が、カウンターの真ん中でウイスキーを飲んでいる。グラスぎりぎりの大きさの氷が 溶けるのを楽しむように時間をかけていた。 少し飲むたびに、への字になる口元。その度に、まわりのヒゲが90度立ち […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(7)

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7   タバコの煙で真っ白になった部屋で、マモル君は陶酔して歌っている。 狭い部屋に人間が7人が座っているが、数時間前には13人が引き詰めていた。けだるいムードだが楽しいようだ。   「終電あるって言 […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(6)

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6   音が出ないよう、そっと黒毛はドアを閉めて外へ出た。 なぜか俺は黒毛に着られている。   自転車に乗って人をかき分けるように進み、小汚いビルの前で降りた。狭い階段をゴツゴツと音を立てて上り、懐かしい匂いのする広い場 […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(5)

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(5)   最近俺は クローゼットの中で3つ折りされることが多くなった。 黒毛が床から俺を拾い上げしまい込むのだ。   クローゼットの中は、湿気とベニア板の匂いが立ちこめ良い気分でない。居心地の悪さを感じている […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(4)

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(4) 今日はマモル君の家に、知り合いが集まっていた。   目を引くのは花柄の男。全面、壁紙のように花が描かれた柄の服を着ている。俺が生まれて間もない頃こんなシャツやワンピースを見たことがあるが。この男の花柄は […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い(3)

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(3) 家に居る以外のほとんどは、縦長いロッカーで過ごしている。朝にハンガーに2つ折りで吊されて、暗くなるまでここに居る。 湿気の多いロッカーは、吊されて居る方が俺は快適だ。マモル君はよそ行きの所作で俺を吊すという選択を […]

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俺はインディゴ 名前はまだ無い (2)

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(2) 吹き付ける冷たい風を防ごうと、アクリルのマフラーをきつく巻き付ける。軽さと洗濯の手軽さが、マモル君の生活に似合っているマフラーだ。しかし防寒性となると、心持たない素材ではと気になるのだが。 マモル君は黒毛と寒さを […]