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メモ書きをした紙広げ、何度も立ち止まる。道路に掲げられた案内標識を見上げながら、家を出てずいぶん自転車を漕いでいる。
雑然とした町並みを抜けると、ギラギラとした看板の多い通りに入った。その屋根の付いた道には、人がひしめき合いながら前に進む。自転車では上手く前には進めず、降りて車輪の横を歩いた。
ユカは自転車を引いて歩くが、乗って進む人間もいる。
そのサマは、昨日今日では成し得ることの出来ない 匠の技かもしれない。
小刻みに震えながらも、まるでスローモーションのような速度で人混みをかき分けて進んでいった。
そんな人が作る大河のような道は、好奇心と苛立ちの渦が活気となって沸き立っている。そこから一部の人間が、流れ出るように左へ曲がり、長細い列を成して進んでいく。
ユカもその細い列に続いて、道を曲がった。
細い列が散り散りにビルへ吸い込まれていくあたりで、ユカは自転車を道路脇に止めた。
どうやら目的の場所に着いたようだ。
「間に合った・・」
フウっとため息をつき一呼吸すると、勇んで階段を上っていく。俺の裾がスニーカーの踵に巻き込むので、ドレスをつまみ上げるように太ももを掴みながら。
階段の上は 爆音の流れる空間だった。服が所狭しと並べられている様子は、きっと服を売る店屋だろう。店内に居る女に声をかけると、奥のドアを指さした。あの無機質なドアの向こうに、部長が居るようだ。
(続く)