俺はインディゴ 名前はまだ無い(18)③

beans

 

18(3)

 

「失礼します」

ドアを開けると、机とイスのワンセットで並べられた部屋があった。その上は、荷物がごちゃごちゃと積み上げられている。

荷物に埋もれるように、よく見ると人が数人、机に向かって何か作業をしていた。

 

「・・・あの、面接に来たんですがぁ」

中のひとりが顔を上げ、室内を見渡すと ハァとため息をつき、だるそうに立ち上がるとこちらへ向かってきた。

 

「こんにちはっ。面接ですね」

鮮やかすぎる笑顔で語りかけ、ユカの名前を確認。くるりと後ろを向き、部屋の奥まで足早に歩いて男に伝えると、ユカに目を合わせること無く、自分の席へもどり気配を消す。

座った背中しか見えないが、細長いが煙がスウッと立ち上がり、そのヤニ臭い煙の先が灰色の部屋へ溶け込んでいた。

 

部屋の奥で、黄色い眼鏡の男が手招きをしている。

この部屋の人間は、言葉数が少ないようだ。

ユカも声を出さずにうなずき、部屋の奥へと進んでいった。

 

「きみが佐々木くんの紹介だね」

対面したソファへ案内されると、ユカはボスっと音を立てて座った。

「はい。仕事ください」

「え?  ははっ、おもしろい子だね。前も古着屋で働いていたらしいね、好きなの?」

「好きかというと好きかも知れません。ギャル系とか、ユカ、全然意味わかんないし」

「えー・・・っと、そうなんだ。得意なことはある?」

「はい、ございます。 ・・・・・・そうだ!これ見てください」

そう言ってササッとソファの横に立ち、俺をぐっと持ち上げて腹を隠したかと思うと、腰に手を当て仁王立ちした。

次の瞬間、両手をあげて背中側にのけぞり、手を床に付けると、また「ぐえっ」と声を出しながら立ち戻った。

「ブリッジかぁ! ブリッジからの。はぁ! 凄いね」

「はい。側転もできます」

そういって場所を確認するユカに

「いいよ、大丈夫。ありがとう、座って」と、黄色い眼鏡は止めるように促した。

 

「えっと、一応もらっておこうか。履歴書持ってる?」

「はい」

「・・・・あーっと、家は近いのかな?時期によって終電ぎりぎりまで残業があるんだけど どう?」

「大丈夫です。自転車だし、メグと一緒に帰るし」

「えっと、佐々木君と家が近いのかい」

「一緒に住んでます」

「そ、そうなんだ。2人はえっーっと・・いや、プライベートは聞かないですよ、失礼」

「・・?」

「えーっと、そうだね。いつから入れる? 今、シフト決めちゃって良い?」

 

そう言って黄色い眼鏡は本と紙を広げ、何やら今後のスケジュールを決めると話しは終わった。

ソファから離れ、灰色の部屋から出た。

 

自転車にまたがると、

「たこ焼き買って帰ろ」と呟くユカの笑顔が、赤い夕日に照らされていた。

またたこ焼き屋を探して うろつくのか。

今日は、なかなか家には帰れないようだ。

 

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