俺はインディゴ 名前はまだ無い(21)

beans

 

21

 

「休憩室 行かへんの?」

人ひとりがすれ違う為に 身をかがめる、ビルとビルの間の路地。その隙間で上手く立つ自販機の横に、俺は地べたに座っている。ユカはぬかるみを避けて座っているようだが、あとに残りそうな匂いのする地面だ。

 

「ちょっとヤニるだけだから。メグ、遅番だっけ、早くない?」

話す口から、タバコの残りの煙が もくもくと漏れる。

「ウチの店舗、ここから遠いからね。しかもさぁ、昼になると どのテナントも休憩回しだしすやろ。ビルやと、従業員エレベーターが混むねん」

 

「大変なんですね」

ユカの横で尻を浮かせて座る、シルバー玉が唇に付いた女が、客と話しているときのように 丁寧に話しかけた。

「せやねん。タイムカード押してから店出るまでの時間がややこしいねん。ほないくわ、お疲れ様です~」

 

去る後ろ姿を見ながら

「ビルって綺麗そうだから羨ましかったけど、大変なこともあるんだね」

とユカが言うと、

「結構めんどくさいらしよ、あたしは無理だね」

シルバー玉の女は答え、厄払いのようにスパーっと煙りを吐き出す。

「めんどくさいって? メグ、大丈夫かなぁ」

「佐々木さんは大丈夫でしょ。まぁ、あのビル、百貨店とは違うから 生きていられそう」

「・・・?生きる?百貨店って生きれないの?」

「事務所のワンレン女みたいに、下手すると魂抜かれるってこと。笑顔でキレてるだろ、あれ百貨店あがり」

「あー、さらさらしたワンレンの長い髪が綺麗な人! ・・・たしかに いつもイライラしてるような・・・」

「自分ころし過ぎると、あんな風になるからな。ジブリも接客 続けるなら気を付けな」

「・・はぁ、なんか難しいッスね」

 

ベルトがしゃがんだ腰回りを締め付け、ユカの腰が赤く変色してきた。

ボリボリと掻きむしるユカを眺めながら、

「あんた、ほんとにジブリに出てきそうだな」とシルバー玉が唇に付いた女が呟いた。

 

 

 

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