小説

俺はインディゴ名前はまだない(25)

beans

※ 更新、お待たせいたしました。いつも読んで下さりありがとうございます。

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25

 

「店長のお客さんって、月曜日に多くないっすか?」

段ボールのスウェットトップスを、畳み直しストック棚に重ね置きながらユカか聞いた。

シルバー玉の女は何十着も山になったワンピースに、ハンガーを付けてラックに掛けている。一着ずつワンピースの着丈を確認するように自分に当てているので作業は一向に進んでいない。

「美容師だよ、月曜が休みらしいね」

「あぁ、美容師さんだったんだ! なんかオシャレっぽいし、何枚も買うし。てっきり店長に貢いでるのかと思った!」

「仕事着だろ。汚れるから、高すぎない服を数 欲しいってさ。ダサい人に髪切られたくないだろうからって、服の流行を店長に任せてるらしいよ」

「すごっ。頑張ってる人だったんだ」

ユカは話しながらワンピースのラックに近づき、蛍光色のサイケデリックなワンピースを手に取って眺めだした。

「貢ぐやら、頑張ってるとか・・ジブリ偉そうだな、客を評価するなよ。ヒザがズレたデニム着ながら」

「でたっ!怖い、怖い。もーしわけ、ござーいませーん」

 

2人がごちゃごちゃと話しながらワンピースを見ていると、ストックルームの仕切りカーテンの隙間から「しつれいします」と声がした。

入ってきたのは事務所のワンレン女だ。ふわりと甘ったるい香水の匂いが、古着のにおいと混じり合う。

「昨日の日報の数字に誤差がありますので、修正をお願いします」

シルバー玉の女に紙を渡すと、おもむろにラメ素材のカシュクールワンピースをラックから手に取った。「長すぎるわね」などと言いながら体に当てている。

 

3人はキャッチボールの無い会話をしながら、各々にワンピースを手に取り吟味していると ストックルームに店長が入ってきた。

「めちゃ居るやん。みんな、ワンピース 好っきやなー。ジブリ、今日入ってきたスウェットの中に、黒っぽいカラーのんあった?今、客注で欲しいんだけど」

「あ! はい!」

ユカは急いで持ち場に戻ると、めぼしいスウェットのプルオーバートップスを取り、店長に渡した。

「ありがと。えーっと、あれやで。休憩まわすからストック出し終わった方から表出てな」

そう言ってストックルームを出ていった店長の後を追うように、

「そうね。一着づつ見ていたら 日が暮れそうね」と捨て台詞を吐いて、ワンレン女も出て行った。

 

またユカとシルバー玉の女だけになったストックルーム。ユカはスウェットの持ち場に戻ると、だるそうに作業を再開した。

ワンピースラックのシルバー玉の女は、相変わらずじっくりと眺めて掛けている。

「ヴィンテージはさぁ、一着ずつ見ておかないと接客なんてできないのにな」

ワンレン女の言葉への返答だろうか。苛つきながら呟いた。

「でも、日が暮れるって言ってましたよ? ガサッと出して終わらせましょーよ」

ユカの言葉は、火に油を注いでしまったようだ。

「あんた、バカ? 古着を並べて売るだけなら リサイクルショップで良いじゃん。」

声量のない声を裏返しながら、シルバー玉の女が興奮して話し続ける。

「ジブリさぁ、流行ってる服を客に薦めるだけだから、個人売りの予算 落としてるんだよ。ヒザのズレたデニムパンツ履いてさ」

「うわぁぁぁ、マジ怖いんですけどぉ。てか、イイ感じのデニムのヒザって大体みんなズレるじゃん。言い過ぎじゃね?」

険悪な空気から逃げるように、素早くスウェットトップスを畳み終え、そそくさとストックルームを出て行った。

 

店長に声を掛け、売り場の服を畳みながら ぼんやり考え事をするユカ。

 

ふと鏡に全身を映し、俺の色の変わったヒザを見つめている。たしかにユカの膝の位置より随分と下の方で、擦れて変色した部分がある。

「・・・・ヒザっていうかスネだな」

呟きながら ヒザの位置を合わせるように俺を摘まみ上げた。

いつもは隠れているブーツの10ホールがあらわになり、ゲッタグリップと書かれたタグに 俺の裾が乗っかった。

 

 

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